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気が向いた時にしか書けない(描けない)小説やらマンガの進行状況がわかるよ!

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東方異聞奇譚 閑話:余四郎争奪戦
 余四郎は髪を真ん中でわけ、おさげにしていた。リボンは白地に赤の水玉だ。
 淡い桃色のワンピースに白いハイソックスを穿いた余四郎を、長兄の松太郎が先ほどから写真を撮り続けている。

「かわいいーねー、余四郎ちゃん~。こっち向いて」

 鼻の下がびろーんと垂れ下がっている。
 松太郎は一回り年が離れた末の弟が可愛くて可愛くて仕方がない。

「もっと、近くに来てくれないかな」

 余四郎は松太郎がいったとおりに、近づいてきた。

 間近で見る余四郎はこの世のものとは思えないくらい愛らしい。
 ぱっちりとした大きな黒い瞳に、長い睫。白いつやつやの肌。

 天使だ……。

 うっとりとしていると、余四郎にとっても大事なところをむぎゅっと踏まれた。

「余四郎ちゃん! ここはダメだって! まだ使い込んでいないのに、ダメになったら、めげるでしょう」

 余四郎はプイッと横を向いた。少し機嫌が悪くなった顔も可愛い。
 余四郎は、写真を撮られ続けているのにどうやら飽きたようだ。眉間にシワがよってきた。
 機嫌を直すために、松太郎はおやつ攻撃にでた。

「余四郎ちゃん、まんじゅうあげようね」

 余四郎は頷いた。座卓の前に座り、まんじゅうが出てくるのを待つ。松太郎はつややかで鮮やかな朱色と文様が美しい飾棚からまんじゅうを取り出そうとした時、縁側の障子が勢いよく開いた。

「余四郎! カステラあるよ! 食べよう」

 四つ年下の梅三郎がやってきて、カステラで余四郎をつろうとする。
 うんと頷いた余四郎はてけてけと歩き、梅三郎が差し伸べた右手に左手をつないだ。

 梅三郎に、渡してたまるか。


「余四郎は、まんじゅう食べるんだよ。ねぇ、余四郎ちゃん」

 松太郎は空いた右手を掴んだ。
 松太郎は右へ、梅三郎は左へとひっぱる。両者とも譲らない。このままでは余四郎の体はまっぷたつに引き裂かれる。体が痛くなった余四郎は大きな声で泣き叫んだ。

「余四郎、お兄ちゃんが悪かった。痛くないか。梅、お前のせいだ」

 松太郎は梅三郎の頭を叩いた。

「松兄が後から余四郎の手を掴んだんだろう。悪いのは松兄だ」
「何だとぉ」
「やる気か」

 泣いている余四郎を放って、取っ組み合いのケンカが始まった。

 余四郎の泣き声を聞きつけた竹次郎は、ボカスカボカスカ殴りあっている兄と弟を無視して、余四郎の頭をなでた。

「余四郎、兄ちゃんと一緒に浪漫・素屋のシュークリームを食べに行こう」
「うん!」

 泣き止んだ余四郎は目を輝かせて頷いた。
 余四郎の手を引いて部屋を出て行こうとした竹次郎に「待て」と松太郎たちの声がかかった。

「竹、お前、余四郎を浪漫・素屋まで歩かせるのか。余四郎、お兄ちゃんがおんぶしてやるから」

 ちなみに、自宅から浪漫・素屋までほんの十分弱である。

「僕が抱っこしてやるから」

 梅三郎がおいでおいでと手招きする。

「俺が肩車してやる」

 三人とも共に譲らない。バチバチと火花を散らし、にらみ合う。

 余四郎は自分の物だ。誰にも渡さん!

 ちっとも浪漫・素屋に行こうとしない兄たちに腹がたってきた。愛らし眉がきゅっと吊り上り、小さな頬がぷぅと膨らんだ。

「余四郎は歩いていけるもん」

 一人すたすたと歩いていってしまった。
 五歳の余四郎は赤ちゃん扱いされるのに、我慢ならなかったのだ。

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 お兄さんズ、勢ぞろいw。
 余四郎が五歳なので、松太郎は十七歳、竹次郎は十五歳、梅三郎は十三歳という、血の気の多い年頃でございます。

 

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